さようなら、ディスタンス。








まだ冷静に昨日のことを考えられなかった。


ただ、過ちを犯したことは確かだ。


わたしは1つの決心を胸に、人であふれ返っている東京に足を踏み入れた。



時間は昼の12時。もうあいつ起きた頃だろうな。



『東京着いた!』



本当は東京駅の写真を送りたかったけど、すぐ電車に乗り換えたため、新宿駅の写真を送った。



現実を見ないようにするためか、いつも通りをよそおった。


わたしが東京で結論を出し、彼も彼でけじめをつけてくれることを期待していた。




東京はやっぱり異次元の世界だ。


人混みに流されまくりで、全然地に足がついている気がしない。


改札に向かう時も出てからも、人をよけてはすぐ人にぶつかりそうになる。


駅から離れ、カフェに入っても人がたくさん。一息もつけない。


よくこんなとこで暮らそうなんて思うよな。



ようやく空いたカウンター席に座り、アイスココアを飲みながらスマホをチェックした。



ラインに来ていたのは、昨日の花火でとったらしいみんなの集合写真と、


光くんからの『ライブ終わったらおれの部屋で待ってて』という連絡事項。


何も考えずにささっと返事をした。



他に届いていたのは、ゲームやアプリのお知らせだけ。



――おかしい。


いつもはすぐ返事があるのに。



期待から不安へ。猛スピードで気持ちが書き換えられていく。


耐えられず、画面を操作し通話マークをタップした。