さようなら、ディスタンス。




「これ、似合ってる。かわいいじゃん」



祐希はおだやかな口調でそう言い、わたしの右耳を優しく撫でた。



「そ、そう……?」



びくりと体が反応する。


でも抵抗はしなかった。できなかった。くすぐったさが気持ち良かった。



「空ける時もすげーかわいかった」


「ええっ?」


「ぷるぷる震えながら、俺にしがみついてくるし」


「ちょっ、普通に恥ずかしいんだけど」



ばしりと肩を叩き、顔を熱くさせていると。


祐希ははにかんだ笑顔を真顔に戻し、もう一度、顔を近づけてきた。



前髪がこすれあい、額同士がこつんとぶつかる。手が強く握られる。同じ強さで握り返す。



キスされるかと思ったのに、寸前で彼は止めた。



「未織」



1つ音が鳴ったかと思えば、次々と打ち上げ音が続いていく。


何かが壊れていく爆発音にも思えた。



「……ん?」


「キスして」



でも、この時のわたしは、


ナイアガラ花火かな。きれいなんだろうな。


なんてことを考えながら、吸い込まれるように彼の唇に自分のを重ねていた。