さようなら、ディスタンス。



いけないことだと認識はしている。


でも、ほんの少し、予想と期待はしていた。


だからこそ、だめだと思えば思うほど、体が動かなくなる。


もっとわたしを求めてほしいとさえ思ってしまう。



「さっきから、お前があっちばっか見ててムカつく」


「あっちって? 花火?」


「東京」


「え?」



思わず祐希を見上げた。



確かにこの歩道橋からの方向は一緒だけど、打ち上げ場所は所詮市内だよ。東京なんか全然相手にならないよ。


そう反論するヒマもなく、キスによって口がふさがれた。



彼氏への気持ちが薄れてきて寂しかったから。


いい感じのシチュエーションにわくわくしていたから。


花火がきれいだったから。


他の男のこと今は考えるなって言われたから。



理由はどうであれ、わたしは今、ドキドキして胸がはちきれそうになっている。



「…………」



唇が離れても、視線は絡まったまま。



切れ長の二重はわたしにだけ向けられている。心までもとらえて離してくれない。



そっか。こんな真剣な顔するんだ。


少し強引で感情的なキスするんだ。



彼をひとり占めできる麻里奈さんがうらやましい。