再びゆっくりと光が煙のように立ち上り、夜空に大輪を描いた。
ほんの少し遅れて、破裂音がわたしたちにも届く。
その間にもせわしなく足元にはヘッドライトとエンジン音が行き交っていた。
「去年はさ」
「ん?」
「わたし、光くんとあの花火見に行ったんだよね。付き合う直前のデート、みたいな?」
「へー」
「そういえば祐希はあの頃、1こ下の子と付き合ってたよね。超かわいいって有名だった子」
「…………」
「祐希も去年、花火デートしたの? どうなの?」
「もう忘れた」
彼の答えは、どこか冷たさを帯びていた。
だけど、構わずわたしは話をつづけた。
「明日、わたし東京行くじゃん。なんか光くんと上手く話せないような気する」
「…………」
「この道路の先、大都会で頑張ってるんだろうけど、光くんとつながってる感じが全然しなくて」
次の花火が打ちあがる。
散った火花は色を変えながら夜へと消えていく。
「ねー祐希、聞いてる?」

