さようなら、ディスタンス。




歩道橋の階段を上り終えると同時に、ファミレスの看板の奥に色とりどりの光の花が咲いた。


そのコンマ何秒後かに、どーんと大きな音が鳴り響く。



「わーちゃんと見える。去年よりすごくなってない?」


「おんなじだべ」


「あれ。そう?」



4号線沿いは車やお店が多く、まわりよりも色があふれている。


でも、打ち上げ場所はかなりの暗がりにあるため、光の奥に花火の姿がくっきりと彩られていた。



「でも、やっぱりいいよね。花火って」


「ん」



手すりに肘を乗せ、隣で花火を見ている祐希。


どんな気持ちで見ているのだろうか。


チラッと様子を見る。視線は夜空に消えるスターマインに向けられたまま。



わたしも大人しく花火に集中することにした。



「お前。ちゃんと見える?」



祐希がわたしに顔を向けたのが分かった。



「見えるよ。ありがとう」



インターバル中か、夜空にはかすかな星しか描かれていない。


次の一発を待とうと、わたしは藍色のスクリーンを眺め続けた。



祐希は「ならいいけど」とつぶやき、わたしと同じ方向に視線を戻した。