『なんで東京なの? こっちの大学受かったんでしょ? 今みたいに地元でバンドするのはダメなの?』
目は合わせられないまま。
でも光くんが軽くうなずいたのには気がついた。
『おれ、胸を張って未織の彼氏って言えるような男になりたいから』
『……え?』
『上手く言えないんだけど。ごめん、わかってほしい』
彼の真剣な表情が揺らぎそうになったため、視線を足元へと落とした。
わかってほしいって言われても、全然わからない。
わたしにとっては、今の光くんで十分だから。
見た目はかっこいいのに弱々しくて、すぐへこんで、ちょっと抜けていて。
家に遊びに行ったら、ずっとギターをさわっていて、わたしのことは放置で。
怒るとすぐにごめんと謝り、ぽんぽんと優しく頭を撫でてくれる。
そんな光くんのことが大好きなのに。
彼は地元の国立大学を蹴って、わざわざ東京の私立大学に行くことにしたらしい。