「じゃ、わたし用事あるから」



そう言い捨て、彼から逃げることにした。



あー隼人だーばいばーい! とすれ違いざまに女子たちが手を振っていく。


彼はモテるらしい。なぜわたしなんかに絡んでくるんだ。



「未織ちゃん待ってよー」



慌てた声とともに、後ろから肩をつかまれた。


あーしつこい! だから触ってくんなよ。



「今日も祐希と帰るの?」


「まあ、そうだけど」


「あのさ、祐希とはどうなってんの?」



しかも話題もうざい!



「どうって、別に」



手は肩に置かれたまま。しっしっと払うジェスチャーをしても、退けてくれなかった。



隼人くんはなぜか真剣な顔でじっと見つめてきた。


湿度の高い廊下で、嫌な熱さがまとわりついている。



目を合わせたくなかった。


うぬぼれかもしれないけど、狙われてるような、そんな視線だったから。