もやもやした気持ちのまま、おにぎりを一口かじる。
スマホゲーと女子トークと昼食を全て両立させようとしたが、
「隼人くんってみおりんのこと好きらしいよ」
「はぁ?」
アユからのこそこそ声に、口から麺を吹き出しそうになった。
「それはないでしょ。わたし彼氏いるし」
「でも遠距離じゃん。しかも光さん忙しそうじゃん。その隙狙ってるらしいよ」
「忙しいって?」
「ちょっと、あんた知らないの?」
なつみがあるツイッターの画面をわたしに見せてきた。
それは、光くんのバンドのアカウント。
ゴールデンウィーク頃に見た時よりも、フォロー数は2倍、フォロワー数は10倍くらいになっていた。
スマホを貸してもらい、ツイートをさかのぼってみた。
ライブの告知や、練習風景の写真、動画サイトにアップされたライブ映像など、情報が次々と流れていく。
そのどれにもたくさんのいいね&リツイートがつけられていた。
光くんが東京でライブ活動をはじめたのは5月から。
たった2ヶ月しか経ってないのに。すごいじゃん。めちゃくちゃ順調じゃん。
だけど、光くんの音楽は、わたしにとって難解だ。
歌詞が難しいし、演奏も複雑だし、どこがサビかもわからない。
「わたし音楽のことよくわからないんだよね」
そうつぶやくと、えー? ひどーい! などと女子たちから非難の声をかけられた。
しょうがないじゃん。わたし音痴だし、音楽については音楽好きな人が評価すればいい。
バンドやってる光くんにほれたわけじゃないんだから。
一応、かげながら応援してるつもりではある。
光くんに『すごいね。バンド人気なんだね』と送ると、
『ありがとう』『自分でもびっくりしてる』と返事が来た。