『東京』のレコーディングは順調に進み、後は僕の歌入れだけになった。



ヘッドホンから流れるのは僕らの演奏。


卓くんのドラムは力強さと繊細さが共存していて、湯朝さんのベースは作りこまれた音の中から優しさが漏れていた。


2人とも曲をそれぞれ理解して、演奏してくれている。



後は僕の想いをメロディーと言葉にのせるだけだ。


腹に息を吸いこみ、精一杯、この曲に込めた感情をぶちまけた。



1テイク目が終わった時、卓くんに声をかけられた。



「あれ? お前『東京』のラスト、変えた?」


「うん。どうかな」



そう尋ねると、


「いいじゃん」


と卓くんは一言、笑顔で返してくれた。




『息苦しいこの街で 時々きみを思い出し 生きていくよ 僕の道を』