白衣の王子様の恋愛感 【番外編12月7日up】

「2人とも来てたのね?だったら、一緒に食事すればよかったわね、望さん。」


能天気なママの声と表情が、後ろの人物にも向けられる。

そこにはゆう君のお母さんの望さんがいた。

そうか、今日のママのお出かけの相手は望さんだったのか。

しかも、食事はここだったのね・・・。


「本当に!ねえ、伊知子さん。・・・悠理、久しぶりじゃない?だいたい、家にも寄り付かないで、たまには顔を見せなさ・・・!ねえ、それ・・・指輪?えー!悠理があげたの?えー!それは、そういうことなの?!」

口に手をあてて、急に興奮する望さん。

「あら、ホントだわ。見たこと無い指輪ね。・・・もしかして、今日、もらったの?法子。」


望さんに言われて、私の手元を覗き込むママ。

今も、私の左手はゆう君の掌の上にある。

外すタイミングも、隠すタイミングも、すっかり逃してしまった。

「え?あー、えーと、えーと・・・。」

口をパクパクと動かして、何と答えればいいのか急いで考える。

でも、頭って本当に真っ白になるんだね。

想定外の咄嗟の事がおこって言葉が出てこない。

見るからに挙動不審の私。

何を言っても誤解される気がして、なかなか言葉が見つからない。


「悠理!いつから?いつから、のりちゃんと付き合ってたの?・・・それ婚約指輪?もしかして今日はプロポーズとかしちゃったりしてたの?」


さらに畳み掛ける、ウキウキしている望さん。

付き合ってもいないのに、プロポーズなんて飛躍しすぎだ。

どんどん進む話にオロオロする私。

変な汗が出る。


「え?プロポーズ?・・・法子、どうして付き合っていること言ってくれなかったのよの?知っていたら、ゆう君にお見合いの話だってしなかったのに・・・法子、ゆう君、ごめんなさいね。あらやだ、今も私たちは2人のお邪魔なんじゃない?」


いつものママとはぜんぜん違う、まるでテレビの再現ドラマに出てくるおばさんのように、お芝居しはじめた。

望さんもそれに合わせる。

ニヤニヤして、お口に手を当てて。


「あ?そうですね。・・・さっさと退散しましょ!」

「そうね、そうね。法子、先に帰ってるわね。あっ、そうだ・・・帰らない時は、連絡だけは入れてね。パパには私から上手く言っておくから。」


はあ~?

望さんもママも思い込んだら一直線タイプ。

口を挟む暇もくれない。

空いた口が塞がらないとは、今の状況だ。


「え?!いや、ちょっと待って!!」


後を追いかけようとした私の肩をゆう君は掴んできた。

「ゆう君・・・?」

振り返りゆう君を見れば、何も言わずにゆう君は首を横に振り、私を制した。