目を開ければ、伊野君は私たちより5mくらい先にいた。
肩に置かれた手を見れば後ろからだった事に気が付く。
私じゃ無いその手を目だけで辿れば・・・
少し着崩したシャツにジャケットの前のボタンをしていない、ゆう君がいた。
「!!」
「悪い・・・遅くなって。でも、間に合ったな。」
口角を少しもちあげて微笑むゆう君。
少しだけ息が切れている。
額にはうっすらと汗が見えた。
急いで来てくれた?
私のため?
嬉しくて、嬉しくて、素直に抱きついた。
周りなんて関係なかった。
好きで、好きで、好きで仕方が無い。
「もうすぐ、ラストダンスって受付で聞いた。・・・にしても、これ邪魔なんだけど。なんの仮装?」
そう言って、私の背中に付く羽をゆう君は手で何度も避けている。
「オズの魔法使いの良い魔女グリンダ。・・・ドロシーの願いを叶えるんだよ。」
私の願いは叶わない。
だったら、誰かの願いを叶えてあげたい。
そう願って選んだ。
「魔女に羽なんてあるのか?」
ゆう君からガバっと離れて、パシっと腕を叩く。
「もう!夢が無いなあ。・・・絵本の挿絵にあったからいいの!」
イテー、なんて言いながら腕をさするゆう君。
わざとらしさに私は睨む。
『あと5分だよ!がんばれ、男子。希望を捨てるな!』
会場に響き渡るDJ役の子の声も、さっきとは違い気にならない。

