希望した都川大の合格は勝ち取れなかった。
自分なりに満足がいく努力の結果だったから、悔いは無いけど、忙しいのに勉強を教えてくれたゆう君には感謝と申し訳なさで、思わず謝ってしまった。
ゆう君は私の頭をナデながら、次の頑張れる場所で頑張ればいい、と言ってくれた。
前向きの慰め方が、ゆう君らしくて好き。
私は、都心近くの女子大に入学した。
そこは、外国語を学ぶ女子大として有名企業から人気が高く、就職率もかなり高かった。
ゆう君の後輩になりたいだけで目指した都川大がダメなら、男子がいない大学に行きたかった。
あの予備校の出来事が、男性への苦手意識を植えつけたと思う。
普通には話すことは抵抗無いが、一瞬でも好意を匂わされると、身体に力が入って逃げ出したくて仕方が無くなる。
社会に出たら、そんな事は言ってられないことはわかっている。
ママやゆう君は、大学の4年のうちには落ち着くだろうと言ってくれたので、あまり深く考えないようにした。
私が大学2年の時、ゆう君の海外研修が決まった。
期間は2年。
その間は、日本に帰らないとゆう君は言った。
辛いし悲しいと思ったが、私は止める権利を持たない、ただのいとこ。
だったら、いとこの特権を使う。
「夏休みは遊びに行ってもいい?」
少しでも離れたくなくて、ゆう君のシャツの裾を一握り掴んだまま。
「・・・オレは遊びに行くわけじゃないんだ。忙しいと思うから、来ても会えないかもしれない。・・・いい子でいろよ。」
”忙しい"と言われただけで”嫌いだ”と言われた訳じゃないんだ、と自分に言い聞かせる。
空港で、ゆう君が乗った飛行機を見ながら、涙で見送った。
泣かない事なんてできなかった。