白衣の王子様の恋愛感 【番外編12月7日up】



・・・・・・。


来るだろうと思った、感触は私の唇にやってこなかった・・・。





「・・・だれの許可で得て、ノリに触れているんだ?」





その聞きたかったいつもより低い声に、そっと目を開ければ、男の子の肩を掴んでいるゆう君が見えた。

「ゆう君!!」

振り向いてゆう君を見ている男の子の力が緩んだので、身体にまわる手を振り払ってゆう君の後ろに回り込んだ。

驚いた顔の男の子と目が合う。

「誰だよ!」

男の子の迫力にも負けず、ゆう君は男の子の問いを無視した。

私の方は見ないで、男の子から目を離さずに。


「・・・ノリ、帰るからバッグ持って来て。」

「はい!」



ゆう君のいう事は、私の中で絶対的。

やっぱり条件反射で、勢いよく返事をし、カラオケの部屋へと走り出す。

急いで部屋に入ってきた私を見て、他の子たちが驚いた顔をした。

そんなことは関係ないとばかりに、バッグを掴む。


「私、先に帰るから!!」


「え?えーーー!」


驚きの声を背中に受けながら防音のドアを閉めた。


さっきまでいた廊下に戻ると、2人はさっきと変わらず向かい合っていた。



「・・・ゆう君?」



私の声にゆっくりと振り向いて、ゆう君は近づいて来た。

その表情から何も読み取る事はできない。

私からバッグを受け取り、私の空いた手をしっかりと繋いで出口へ歩き出す。

何も言わないゆう君に私も黙ってついて行った。

男の子を振り返る事も無く、私は隣りのゆう君と前を交互に見ながら。




カラオケからすぐの予備校の前に、ハザードランプをつけたゆう君の車があった。

それを見た瞬間、嬉しくなった。



車で探してくれたの?
私を迎えにきてくれたの?




ニヤニヤ顔に出そうだったけど、不機嫌の雰囲気のゆう君に怒られそうで、口に力を入れへの字にしてがんばった。

やっぱり黙ったまま助手席のドアを開けて、私に乗るように顎で指示するゆう君。

エンジンをかければ、低く流れるゆう君のお気に入りのアーティストの歌声が車内に流れた。