「もしかして、ママから電話が行ったとか?」
ママからの着信の次に2回もゆう君が電話をくれるなんて、きっとそうだろうと思った。
この時間だもんね。
私に関しては、パパよりゆう君の方が役に立つ事をママはわかってる!
『そうだよ。すごく心配してた。で、どこ?』
淡々とした言い方に、もしかして怒っているのかと不安になる。
そんなゆう君の感情1つで落ち込んでしまう。
ゆう君によく聞こえるようにスマホを持っていない右手で軽く覆う。
右肩を壁につけ少し猫背で、うるさいカラオケの部屋が並ぶ廊下に背を向ける。
ゆう君の様子を窺うように、低めの声で素直に謝る事から始める。
「・・・ゴメン。予備校の友達に誘われて、予備校の近くのカラオケ・・・。」
ゆう君に説明を始めれば、急に肩をポンポンと叩かれた。
驚いて振り返れば、さっき隣りに座っていた男の子だった。
思わずスマホを耳から離す。
「誰と?話しているの?」
「・・・え?えっと・・・。」
ママじゃないけど、ママって言うべき?
いとこだと言っても、なぜって聞かれたら、ややこしい気がする。
「あれ?家の人じゃないの?・・・と言う事は、もしかして男?・・・彼氏だったりして。」
すぐに答えないでいたら、また、さっきみたいに目の怖い色になった。
何ていうのだろう。
まるで私が小さい弱い動物になった気分だ。
掴まる!食べられる!そんな感じ。
どうしよう・・・。
急に手首を掴まれて、ビクっと身体を揺らす。

