極上な王子は新妻を一途な愛で独占する

「この計画を立てたのは私です。シェールには千日間、王弟妃として過ごして欲しいと頼みました。つまり初めから千日目の入れ替わりを決めていたのです。そのような事を企んだ理由ですが……っ!」

流暢に語っていたミシェールは、急に苦しそうに顔を歪め咳き込み出した。
直ぐに近くに控えていた医師テオドルが水を用意して、薬と共に手渡す。

ミシェールは警戒する様子もなく、テオドルの手を借りて薬を飲み、しばらくすると落ち着いたのかゆっくりと息を吐いた。

「……なにかの病にかかっているのか?」

カレルの問いに、ミシェールははっきりと答えず曖昧に濁した。

「幼い頃からのものです。移るものではありませんからご心配なく……先程の続きですが、私達はユジェナ侯爵領のリントと言う村で生まれ育ちました。大きな問題を抱えている村ですが、有効な解決方法もなく日々を過ごしていたところ、突然ユジェナ侯爵の使者が訪れ、私に王弟妃になるように命じたのです」

ミシェールが落ち着いたのを確かめると、テオドルは、水差しを片付け彼女の背後に控えた。

「顔も知らない人との突然の結婚話。それも良くない噂しかない王弟殿下の妃。シェールは勝手なユジェナ侯爵に憤慨していました。でも私は怒ったり悲しんだりするよりも、絶好の機会が来たと思ったのです」

「絶好の機会?」

カレルが怪訝な顔をし、ミシェールは小さく頷いた。

「ユジェナ侯爵からリント村の支配権を奪う機会だと思いつきました。ユジェナ侯爵は私を何としても王弟妃にしたがっていましたから、普段なら承知しない条件も飲むと考えたのです」

「ならば……ミシェールとシェールの本当の目的は、リント村を自分達のものにする事だったのか?」

「はい。ユジェナ侯爵には、私達の望みは千日目の離縁だと思いこむよう振る舞いました。彼は最後まで私達の真の望みに気付かずに、リント村の権利を差し出してくれた。計画は上手く行ったのです。唯一の誤算はあなたとシェールが出会った事。そうで無ければ王弟殿下は入れ替わりに気付かなかったでしょう」