極上な王子は新妻を一途な愛で独占する

カレルに気付かれないように、逃げなくては。

未練たらしく村をウロウロしてしまう程会いたかったくせに、今はなぜかカレルに会うのが怖い。

そうっと木の陰を離れ、その後は一気に駆けて王弟館に戻ろうと考え、シェールは頭に被ったベールを落とさないようにしっかり持った。

足音がしないよう気をつけながら、カレルから遠ざかる。

(そろそろ大丈夫よね?)

ここから勢いよく駆け出すのだ。

もし気付かれてしまっても、追いつけないはず。そう確信する程早く走る事には自信がある。故郷の村の子供達の中でも一番早かったのだから。

自信を持って、いざ駆け出そうとしたその時、
「何処に行く気だよ」と機嫌の悪そうな声がすぐ側から聞こえてきた。


「えっ?」

まさかと思いながら、恐る恐る振り返る。

そこには綺麗な顔の眉間にシワを寄せたカレルが、両腕を組んでシェールを見ていた。



「な、なんで居るの?」

さっきまでシェールに気付いた様子は無かったのに。近付かれた気配も感じなかった。

「なんで居るの?って、さっきから居たの知ってるだろ? お前はそれで逃げようとしてたんじゃないのかよ?」

呆れたように言われ、シェールはしどろもどろになりながら答える。

「いや、居たのは知ってるけどこんなに近く無かったでしょ? なんでここにいるの? 気配感じなかったけど⁈」

「お前が逃げようとしているから追いかけて来たに決まってるだろ? 気配は当然消しておいたけどな。気付かれたら今にも駆け出しそうだったし」

当たり前のように言うカレルに、唖然としてしまった。