極上な王子は新妻を一途な愛で独占する

「シェール?」

深刻な表情をするシェールを、ノーラが伺って来る。

「……ノーラ。最近カレルに会った?」

「会ってないね。あんたと同じで急用が出来たからしばらく来れないと言っていたよ。最後に会ったのは……ああ、あれだ。貴族のお姫様が来て騒いでいた時だね」

貴族のお姫様と言うのはマグダレーナの事だろう。
おそらく初めて外出した日の事だ。

あれからもう大分経っている。

「カレルが今何処にいるか知っている?」

「いや、聞かなかった。聞いても答えないだろうしね」

「そう……」

ノーラの性格なら、無理矢理聞き出したりはしない。
無理もない事だと、シェールは目を伏せた。

(カレルは何処にいるの? ……カレルは誰なの?)

王族の血を引くであろうカレル。
その正体はますます謎めいて来る。

マグダレーナでは無いけれど、気になって仕方ない。



診療小屋の掃除を済ませると、シェールはノーラに銀細工の指輪を差し出した。

「これは?」

ノーラが怪訝そうに言う。

「この指輪とお揃いのものを持った人がノーラを訪ねる予定なの。私の知り合いだから診てあげて欲しいの」

「目印だね。その人はどこが悪いんだい?」

「全体的にかな。出来れば直接聞いてあげて。ノーラなら力になれると思うから」

「……よく分からないけど、あんたの頼みなら断れないね。いいよ、任せな。けどあんたはいつ戻って来るんだい?」

ノーラの問いに、シェールは迷わずに答えた。

「分からない、でも必ず連絡するから。来れなくても手紙を書くわ」

「……あんたもカレルも本当に困ったもんだね。人に心配かけてばかりで」

「ごめんね、心配してくれてありがとう……それから私に薬師の仕事を教えてくれて、いつも相手をしてくれて、本当に感謝してるわ」

ノーラは驚いたように、小さな目を見開く。
しばらくしてから、ため息を吐き、強い口調で言った。

「あんたはまだ半人前の薬師なんだからね。教える事はいくらでも有るんだから落ち着いたら戻って来るんだよ!」

「ありがとう」


心の痛みに耐えながら、シェールは明るく笑って言った。