極上な王子は新妻を一途な愛で独占する

「ノーラは私の家族の事とか育ちの事とか全然聞いてこなかったけど、単に関心がないだけかと思ってた。でも実は気を遣ってくれてたんだね。ありがとうね」

「関心が無いことはないよ。けど、どんな人にも聞かれたくない事はあるからね。無理に聞き出すのが嫌いなだけだよ」

「そっか……ねえ、ノーラも聞かれたくない事あるの?」

そう言えば、シェールもノーラの昔の事を聞いた事が無かった。
なんとなく、ずっとこのサンレームで薬師をしていたのだろうと思っていたのだけれど。

ノーラはシワの刻まれた顔に苦笑いを浮かべた。

「それは山程あるよ。あんたより倍以上長く生きているんだからね」

「そっか、じゃあ聞かないでおくね。ノーラの若い頃とか気にはなるんだけど」

「そんな事が気になるのかい?」

「うん、だってノーラの若い姿って、想像出来ないんだもの」

シェールが笑って言うと、ノーラは眉間にしわを寄せて見せた。

「ほら、飲み終わったら続きをやりな」

「うん」

ノーラに急かされ、シェールは再びナイフを手にして木の実の皮を外して行く。
その手つきをじっと見ていたノーラが言った。

「前から思ってたけど、あんた薬草や木の実の処理に慣れているよね。もしかして親が薬師なのかい?」

「えー? 家族の事は聞かないんじゃなかったの?」

シェールが冗談めかして言うと、ノーラはちょっと不満そうな顔をした。

「嫌な事は聞かないって言ったんだよ。言いたくないのかい?」

「……ううん、そんな事ないけど。私ね、本当の親には生まれて直ぐに手放されたの。でも代わって育ててくれた人がいるから大して苦労はしてないんだけど。その育ての親は薬師ではないけど、植物を育てていたの。私も時々手伝っていたから、木の実や草の扱いに慣れているように見えたんだと思う」

「そうかい、じゃあ姉と言うのは義理なんだね……あんたもいろいろと大変なんだね」

「まあ……そんな事あるかな。嫌な事はすぐに忘れちゃうんだけどね」

シェールがそう言って笑うと、「あんたらしいよ」とノーラもニヤリと笑った。