極上な王子は新妻を一途な愛で独占する

作業に集中していた為か、ノーラが戻って来た気配に気付かなかった。

とん、とカップを机に置かれた事で顔を上げると、ノーラがシェールの手元をしげしげと眺めているところだった。

「どうかした?」

「いや、まずは熱いうちにお茶を飲みなよ」

「うん、ありがとう」

独特な香りのするお茶を口に運ぶ。一口飲めばじんわりとした温かさが体中に広がり、ゆったりとした気分になった。

「ノーラの薬草茶は効果抜群ね。味はイマイチだけど」

「あんた、一言余計だよ……でも本当に疲れていたみたいだね。何が有ったんだい?」

ノーラはそう言いながら自分も椅子に腰掛ける。

「うーん、ちょっと姉との事で問題が有って。まだ詳しくは話せないの。ごめんね、心配してくれたのに」

「あんたお姉さんがいたのかい」

「うん……でも、なんで意外そうにしてるの?」

姉がいる事くらい、珍しくもなんともないだろうに。

「……あんたはいつも明るいしおしゃべりだけど、家族の事は一度も話さなかったからね。家族をなくしてるんだろうと思ってたんだよ」

ノーラは少し考えるようにしながら答えた。

シェールは納得して相槌を打つ。

「そういう子、少なくないもんね」

暮らしに困窮して一家離散になる家族、流行病で親を失った子供達。
ここ十年、隣国との戦があった事と、天候が不安定なせいで増えているのだ。

ノーラがシェールの事を、そう言った身の上だと思っていたとしても不思議はない。