マグダレーナが逃げるように部屋から出て行くと、シェールはソファーにどさりと座り込み溜息を吐いた。
「はあ……マグ、真っ青になっていたわ。貴族のお姫様相手にはっきり言い過ぎちゃったかな」
今まで何も言わなかった相手に急に文句をまくし立てられたら、自分だってびっくりする。
肯定され続ける人生を送って来たマグダレーナには更にきつかっただろう。
「傷付けちゃったよね……」
苦手な相手だとしても、心苦しい。
だけど、必要な事だった。
ユジェナ侯爵に手紙を出した事で、状況が変わった。
これから大きな動きが起こる。その日に向けて準備をしなくてはならないのだから。
今迄のようにマグダレーナに付きまとわれては困る。不興を買ってでも距離を置かなくてはならなかった。
そう考えていたところに丁度よくマグダレーナが来たものだから、良い機会だと切り出したものの、日頃の不満とカレルへの干渉を止めて欲しい気持ちが出て、結構な勢いで文句を言った気がする。
「はあ……マグがいつもみたいに怒れば、きっとこんなに後味悪くなかったのに」
ソファーに仰向けになり、天井を眺める。
しばらくの間そうしていたけれど、日が沈みかけ部屋に橙色の光が入って来ると、むくりと起き上がった。
侍女が夕食を届けに来るまでもう時間がない。
いつまでも悩んでいないで、明日の準備を整えなくては。
シェールはユジェナ侯爵への手紙に使った便箋の残りを一枚机に置くと、サラサラと筆を走らせ始めた。
流れるように手早く書き終えると、封筒に入れた。


