「信じられないわ。それじゃあほとんど別居じゃないの」

「まあ、そうですよね」

「そこまで蔑ろにされて平気でいるシェールの神経に驚くわ……それにしても当てが外れたわ」

「アルフレート殿下に何か頼みたかったのですか?」

「そうよ。カレルの事を聞きたかったの。考えてみたらカレルはアルフレート殿下の公表されていない兄弟なのかもしれないって気付いたのよ。だってこのサンレームに住んでいるのだもの。小さな村に王族がふたりなんて偶然集まる訳がないわ」

マグダレーナはソファーに座ると、背もたれに上半身を預け腕を組む。その様子は深層の令嬢と言うより女帝のようだ。そんな事を思いながらシェールは真面目に返事をした。

「私もそれは考えました。でも可能性は低い気がします」

マグダレーナは顔をしかめる。

「どうしてよ」

「マグダレーナ様が、カレルは年上だと言っていましたよね」

本当は正確な年齢を知っている。カレルは二十三歳、いつか本人がそう言っていたから間違いない。


マグダレーナは不審がる事もなく頷く。

「そうよ。多分、三つか四つ年上だと思うわ」

意外と正確なマグダレーナの観察眼に関心しながら、シェールは話を先に進めた。

「アルフレート殿下は私達より年下ですから、この時点でカレルは殿下の弟ではありえないですよね」

アルフレートの正しい年は知らない。見た事が無いのだから外見から判断も出来ない。

けれど彼は先代国王の第七王子。

社交界で華やかな活動をしている第六王子の年齢が十八歳だから、それよりは年下になる事が確定しているのだ。

ならばと兄である可能性を考えたけれど、その線も薄い。

王弟アルフレートの生母は、王の妃としては身分が低い事で有名だ。

つまり結構出自を知られているのだ。それによれば、彼女は先代国王が外交で隣国に行った時に見初めた平民の娘で、強引に側室にされたという。けれどアルフレートを産むと直ぐに亡くなってしまった。そんな状況で年の離れた同父の兄がいるはずがなかった。

その旨を説明すると、反論する材料が見当たらないのか、マグダレーナは黙り難しい顔をした。