晴馬君がシャワーを浴びに行ってすぐ、あたしはその場に座り込む。
部屋中を見渡しても本当に何もなく、むしろこんな所で生活してんのって思う。
もう一度立ち上がってキッチンに行き、食器すらあまりない事に唖然としてしまう。
小さな冷蔵庫を覗いて見るものの、何も入ってなくて。
缶コーヒーと水があるだけ。
いったい何を食べてるんだと思ってしまう。
パチンと冷蔵庫を閉めて唯一、一つだけある窓に向かい開ける。
「わっ、」
目の前に広がるのは河川敷の河原。
その付近を散歩している人もいれば走っている人もいる。
綺麗だな、この景色。
「…萌もシャワー浴びたら?」
「あっ、」
不意に背後から抱きつかれた所為で身体が跳ねる。
「なにその声。エロっ、」
「エロくないし。急に抱きつくから」
「早く入って、風呂。萌の事、触れねーじゃん」
「もう触ってるでしょ?」
背後から抱きつく晴馬君の身体から石鹸の匂いが香る。
あたしの肩に顔を俯かせる晴馬くんの髪からシャンプーの香りが広がる。
やばい。匂いでやられそう…
「だから、もっと触れたいのに触れられない。早くシャワーして」
「な、なんでシャワー急かすの?」
「いいから早く」
「……」
なに?どー言う事?
シャワー浴びて何すんの?
頭の中を過る妄想で、言葉を詰まらせる。
晴馬君のいい匂いで何故かドキドキし始める。



