「嘘に決まってんだろ。俺が負ける訳ねーだろ」
「はぁ?なんで嘘なんかつくの?ひどいっ、」
「それは最後まで見てねーお前が悪い。それに悲しそうな顔すんな」
「だって…」
「なぁ、萌?もう一回言って見てよ、俺の事好きって」
「え、やだよ…」
「ヤダよとか言うなって。傷つくだろ。俺は萌の事、好きだよ。はい、萌も言えよ」
「な、なんで晴馬君、たまに俺様になるの?」
「だって俺、ドSだから」
「それ自分で言う――…」
「…藤堂君、カッコ良かったよねー。イケメンすぎてやばいっしょ」
「その為に今日、来たもんだしね」
遮られた誰かの声に、あたしの身体は晴馬君に抱き寄せられる。
横顔が触れるか触れないかの距離であたしは息を飲み込んだ。
この後ろの階段には誰かが数人いる。
「でもなんかあれだねー…告ってた女ってさ彼女なんかな?」
「違うでしょー…彼女だったら告んなくない?」
「あ、そっか」
「それに藤堂君の好きなタイプって美人さんだもん」
「あ、それにそれに巨乳好きって言う噂」
「えっ、まじー?どこ噂よ」
「巨乳の美人ってレベル高すぎない?」
「今日、叫んでた女違うじゃん」
「あれはただ藤堂君好きの相手にされない女っしょ」
ギャハハ。と笑い声が聞こえ、あたしの顔は次第に曇る。
こんな会話、今までにもたくさん聞いてきたけど、さすがに今日はへこむ。
もう、やだ、帰りたい。



