「何で萌が謝んの?」
「だって、晴馬君が身体痛めてるって気づかなかったから。自分の事でいっぱいいっぱいになってて、ここに来るまで晴馬君の事、何も気づいてあげられなかった。だから――…」
「こんなの萌に比べたら平気」
「あたしに比べたらって?」
「まだ俺、アイツらの事、許してねーんだけどな。…マジ殺したい」
「……」
晴馬君が拳を作って力が入った。
血管が浮き上がって破裂しそうなくらい力が入る。
「今から帰ってもう一度アイツらに会って――…」
「そんなのダメだよっ、」
咄嗟に晴馬君に抱きついてしまった。
膝を地面につきてグッと抱え込む様に晴馬君の首に両腕を回して抱きしめる。
だからその所為で、「え、萌?」なんて晴馬君の声が落ちて来る。
驚くのも無理がないと思う。
面白がって晴馬君から何度も抱きしめられる事があっても、あたしからは一度もないのだから。
心臓がドキドキする。
こんなにも心臓が自棄に早く、打ち付ける事さえも初めてした様な気がする。
好きすぎて、胸が、痛い。
「だめだよ。今日は晴馬君とずっと居たい」
「萌?」
「だって約束したじゃん。晴馬君、優勝したらあたしの一日を頂戴って。だから今日…」
「あー…ごめん、萌。俺、負けたんだよな」
「え、えぇっ!?そうなの?」
思わず抱きしめていた顔を上げると、晴馬君はあたしを見た瞬間にニヤリと笑った。



