「…萌ちんさぁー…俺に告っといて逃げるってなんなの?」
暫くして不意に聞こえた声に、ドクンと心臓が高鳴る。
俯く顔を上げると、制服に着替えていた晴馬君が口角を上げた。
「あっ…」
見た瞬間、更に顔が火照りだす。
どうしよう。
いつもの様に接しられない。
「あの後、俺まで恥ずくなって速攻出たわ」
「ご、ごめん…」
「でも、あれですげぇ気持ち和らいだわ。なぁ、萌?さっき言った俺の事スキってほんと?」
「……」
「って、何でそこで無言になんだよ。そんな態度されっと傷つくわ」
はぁ。とため息を吐き晴馬君はその場で腰を下ろし壁に背をつける。
折り曲げた膝の上で両腕を重ね俯く晴馬君の腕に視線が向く。
左腕に乱暴に巻かれた包帯が今にもとれそうで、その隙間からチラチラと滲む血が痛々しい。
その光景に思わず眉を顰めてしまったあたしは、その腕にそっと触れると晴馬君の腕がピクリと動く。
「晴馬君、ごめんね…」
晴馬君の前に移動して、あたしは一度包帯を解き、更に綺麗に巻きなおす。
目の前で見る傷は思ったよりもひどくて、言葉を失いそうになる。
あたしの所為で、ごめん。



