「ちょっと藤堂君、ヤバいんじゃない?腕…」
「だよねー、なんか見た感じ物凄く赤くない?血滲んでんじゃん」
「腕払いすぎじゃん」
聞こえる雑音の通り、晴馬君の腕は赤かった。
これ以上したら腕、使えなくなるよ?
もう辞めようよ、晴馬君。
芹奈ちゃんのお姉さんもきっと認めてくれるよ?
お姉さんが認めなくても、あたしが認める。
あたしが晴馬君の傍でずっと。
「カイト先輩。あとどれくらいあんの?」
立ち上がって、前の手すりに身体をのめり込んでいるカイトくんに透哉君は声を掛ける。
「今、70入った。外したのは7。今、晴馬が上位だけどこれ以上、もう一射も外せない」
「晴馬先輩の次が8って事?」
「そう。同じになる。でもこんなに引いてんのに射型は初めと同じ。腕庇って払ってるから後半崩れると思ったけど崩れてねぇ。マジすげーわアイツ。バケモンかよ」
「やっぱ晴馬先輩すげーな、尊敬する」
フッと頬を緩めた透哉君の笑った声が聞こえる。
もう外せないって、まだ30もあるのに?
あんな腕赤いのに?
なのになんでみんな凄いって言ってんの?
外しちゃうと、もう負けなんだよね?
「ちょっ、萌っ、何処に行くのっ!?」
立ったあたしに芹奈ちゃんの声が飛ぶ。
慌てて2階の一番晴馬君が見える隅の場所まで急いで行き、目の前の手すりに身体をのめり込ます。
さっき居た場所よりかも晴馬君の姿がハッキリと見える。
そして――…



