「カイト、どんな感じ?」
「外したのは最初だけ。でも矢の照準が揺れて乱れて逸れてる。射型が骨格にあってない」
「……」
「それに何度も腕払ってっから、あのまま最後までいくのは厳しいかと思う」
「……」
「的中してるとは言え、いつもの位置じゃない」
「カイトから見てどう?勝てる?」
「わかんねぇ。百射もしてると次第に庇ってる部分に支障が来る」
「……」
「でも、もうアイツ信じるしかねぇじゃん。アイツ相当頑張ってたよ。休みの日は一日中、弓道に閉じこもって出てこないくらい。2年間やってねーから百射以上に練習してた」
「そう。なら大丈夫かな…」
芹奈ちゃんの優しい声が、芹奈ちゃんの手を伝ってあたしの背中へと流れ込んでくる。
「アイツは負けねーよ。絶対勝つ。だから萌、顔上げろよ」
目から涙が伝う。
俯いて、涙を拭って顔を上げる。
〝もし負けたら萌の事、吹っ切ろうと思う〝
晴馬君の言った言葉が頭の中を駆け巡る。
やだよ、そんなの。
なんでそんなかけ事すんの?
あたしは晴馬君が勝っても負けても、もう好きだよ――…
あたしの為って、なに?
もう訳わかんないよ…



