電車を乗り継いできた場所は物凄く大きな道場。

物凄い人ごみの中、かき分けて入ると、「晴馬っ、」聞き覚えのある声が耳を掠めた。


振り返るとカイトくんが袴を着て、駆け寄って来る。


「カイト、悪いな」

「お前、無茶ぶりしすぎ。俺がお前の代わりなんか無理だっての。しかも3人立、大前ってなんだよ?プレッシャーかけすぎ」

「……」

「俺、もう弓も引いてねーのに、お前みたいにそんなすぐ勘取り戻せねーよ」

「で、団体戦は?」

「晴馬の為じゃなく他のメンバーに申し訳ねぇから頑張ったっつーの。でも2位…」

「上出来。サンキューな」

「4時から個人戦だから急げよ。俺、着替えて来るわ」

「あぁ――…」

「萌っ、」


カイトくんが姿を消してすぐ新たに弾けた声が聞こえる方向を見ると芹奈ちゃんが走って来る。


「芹奈ちゃん…」

「もう心配したんだよ?」

「ごめんね芹奈ちゃん…」

「芹奈?萌の事頼む」


晴馬君がそう言って足を進めて行く晴馬君を追っかけて、その腕を芹奈ちゃんは掴む。


「待って、晴馬」


その声で晴馬君が足を止めると、「なに?」スッと眉を寄せた。


「晴馬に聞きたい事がある。ちょっと来て」

「時間ねーから」


芹奈ちゃんが晴馬君を引っ張って姿を消す。

だけど、それが気になってあたしは隠れながらそっと耳を潜めた。


「晴馬が今からしたい理由って何?なんで急に大会になんか出るの?」

「……」

「教えて。こんなんじゃ萌が可哀そうだよ。萌を、萌を悲しませないで!」


芹奈ちゃんが必死で晴馬君に向かって叫んだ声が響く。

思わず顔を少し出すと芹奈ちゃんが晴馬君の顔をジッと見つめてた。


お互いがお互いを目で殺してる様に見えて、過去を思い出す。