「ねぇ萌?今から一緒に行かない?」
「え?」
「晴馬が行ってるんだったら一緒に行こうよ」
「あ、でも…」
「透哉にも言っとくから」
「ご、めん芹奈ちゃん…あたし今日用事があるの…」
「え、そうなの?」
「うん。だから行けない」
「……」
「ご、めん…」
「そっか」
「ゴメンね芹奈ちゃん…」
本当は透哉君と食べる予定だったんだよね。
なのにあたしに付き合ってくれてありがとう。
ちょっと芹奈ちゃんに会いづらいなんて思ってたけど、気が和らいだ気がする。
芹奈ちゃんと食堂で別れて、あたしは重い足取りで南条へ向かった。
無視でもしてやろうかなんて思ったけど、恐くて、恐くて後ずさりなんて出来なかった。
それを考えてたら南条を目の前に足が動かなく、ただひたすら陰に隠れて足が動かなかった。
「来ねぇのかと思った」
どれくらい経ったのか分かんなかった。
正門に着くと佐々木君が壁に背をつけて待っていた。
フッと笑ったその佐々木君の目がなんだか怖った――…
「佐々木君あたし、佐々木君の事――…」
「いいから来て」
「お願い。ここで聞いて。あたし佐々木君とは付き合えない」
「は?キスまでしたのに」
「それは佐々木君が無理やり――…」
「萌だってその気になってただろ。俺の事ずっと好きだったくせに」
「でも、もう今じゃ佐々木君の事――…」
「おい、佐々木。おせぇよ、どんだけ待たせんだよ」
あたしの言葉を遮って近づいて来たのは3人の男。
「え、なに?」
「だから萌の事、紹介するって言っただろ」
え、でもなんか違うよ。
恐い。
目つきも風貌も何もかも全てが、恐い。



