「晴馬が?」
「うん。だからね、晴馬くんはあたしじゃないよ?芹奈ちゃん、さっき言ったでしょ?まだ3年だって」
「……」
「まだ3年しか経ってないんだよ?なのにそんな簡単に好きだった人を忘れられる訳ないでしょ?」
「……」
「だから晴馬君はあたしじゃないよ?」
「……」
芹奈ちゃんは俯いた。
スプーンを手にしたまま微動だせずにジッと何かを考えてた。
「…芹奈ちゃん?」
覗き込むようにするあたしに芹奈ちゃんはハッと顔を上げる。
「あ、ごめん」
「うん?」
「なんで今更出るんだろうって…」
「え?だからお姉さんの…」
「違う。晴馬はもう弓を持つことにも離れてる。高校に入って一年間はしてたけど、それからは全く触れようともしなかった」
「……」
「晴馬ほんとに凄くてさ。中学の時、ど素人で弓道した初日に的中すんの。どこにそんな才能あんのか分かんないけど、大会ではほぼ優勝」
「……」
「だけど晴馬はそんな地味な事したくなかったんだよね。でも荒れてる晴馬をちょっとでも変えたくて、お姉ちゃんが弓道に誘ったの」
「……」
「お姉ちゃんが亡くなって、余計に荒れる晴馬を誰も止める事も出来なくて、あたしはそんな晴馬が大嫌いだった」
「……」
「そっから少しずつ晴馬は弓道から遠ざかっていってたのに、なんでまた急に?何考えてんの、アイツ…」
「……」
晴馬君の過去が少しずつ見えて来る。
何も知らない晴馬君の事が、胸にスーッと入ってきて、目を瞑ると晴馬君の過去が再現できるように流れ込む。
だけど、晴馬君が考えている事が分からなくなっていた。



