「ねぇ、芹奈ちゃん…今日、晴馬先輩は?」
「えー…晴馬?知らないよ。アイツ最近、ほんっとルーズだよね。休みすぎ」
「……」
「だからと言って別に話す事ないけどさ、」
「……」
やっぱ芹奈ちゃんは知らないんだ。
でも、この事を言っていいのかも分かんない。
言ったら芹奈ちゃんはどんな顔をするんだろう。
「萌?言おうか言わないか迷ったけど、晴馬はもう姉の事、好きじゃないよ?好きなのは萌だよ」
違う。
違うよ。
晴馬君が好きなのは、まだ芹奈ちゃんのお姉さんだよ。
あたしじゃない。
あたしには好きって口を開いてるけど、本当はお姉さんがまだ好きなんだよ。
お姉さんの約束、まだ守ってんだよ。
好きだから。お姉さんの為に優勝狙ってんだよ。
それが今、芹奈ちゃんを目の前にして分かったんだ…
晴馬君があたしに好きと言ってくれるのにまだ切ないのは、晴馬君がまだお姉さんを好きだからだ。
「違うよ、芹奈ちゃん…」
「え?」
「晴馬君、まだ芹奈ちゃんのお姉さんの事、好きだよ?」
「え、何言ってんの萌。もう晴馬とはそんな話、高校に入ってからしてない」
「……」
「今の晴馬の中に萌が居る」
「じゃ、どうして大会に出るの?お姉さんとの約束まだ守ってるからだよ?」
「え、どう言う事?晴馬が大会ってなに?」
「晴馬君が来てないのは弓道の練習をしてたから。お姉さんと約束した3年前と同じ命日と同じの今日の大会で優勝狙うって」
「はぁ?」
「優勝したら報告したいって言ってた」
″優勝したらお前の一日を俺に頂戴″
きっとその言葉は、付け加えたようなもんだ…



