その日の夜はほとんど眠りにつく事が出来なかった。
瞼を閉じても寝つく事が出来なくて、物凄く瞼が重い。
寝付こうとした前に入ってきた佐々木君からのLINEの所為で、寝れなかった。
″萌、待ってるから″その言葉に嬉しさなんて何もない。
凄く好きだった気持ちが一瞬で醒める事を知った今、身体が震える。
あたしは佐々木君じゃなかった。
あたしの中にはずっと晴馬君が居たんだ。
でも、今日、晴馬君は居ない。
″優勝したらお前の一日を俺に頂戴″
″もし負けたら萌の事もう吹っ切るから″
その言葉をどう受け取ったらいいのか分かんない。
「萌?ちょっと保健室行って来っから芹奈と食べて」
「え、どうしたの麻友ちゃん…」
土曜の授業は3時間で終わった。
速攻立ち上がった麻友ちゃんは頭を摩る。
「なんか風邪っぽい。頭痛すぎ」
「えっ!?麻友ちゃんでも風邪引くの?」
「何よ、その言い方。風邪くらい引くわよ。萌は引かないだろうけど」
「え、なんで?」
「馬鹿は風邪ひかないって言うでしょ?」
「麻友ちゃんひどいっ、」
「あはは。嘘だって。萌の事、笑わせたかっただけだから」
「え?」
「最近、暗い顔ばっかしてんからだろ。じゃあね、」
「ま、麻友ちゃん。元気でね」
「はぁ?永遠の別れみたいな事、言ってんじゃないよ」
「あ、そだね。お大事に」
頭を押さえてフッと笑う麻友ちゃんは手をヒラヒラさせて教室を出て行った。
大丈夫かな、麻友ちゃん…
あたしの事、気遣ってくれて。
麻友ちゃんはいつもそうやって、あたしを笑わせてくれるから好き…



