「萌は、俺のストーカー?」
いつもの晴馬君だった。
フッと笑った晴馬君があたしの顔を覗き込む。
「ち、違うよ」
「って、そこはそうだよって言ってほしかったな」
「…っ、」
「萌、何してんのこんな所で」
「晴馬君に聞きたい事ある」
「俺に?」
「うん」
「なに?」
「晴馬君、あたしの事、避けてるよね?それってあたしが晴馬君に酷い事言ったから?」
恐る恐る晴馬君を見上げた。
なのに晴馬君は、「俺、萌に何言われたっけ?」なんて惚けて口角を上げた。
なんで、なんでそんな風に言うんだろう。
いつもみたいに、覚えてねぇのかよ馬鹿。って何で言わないんだろう。
「晴馬君、あたしの事嫌い?」
「なんで?嫌いじゃねーよ。だって友達だろ?俺ら…」
なんでかな、なんでかんな、なんでかな。
分からないけど涙が伝う。
あたしが言った言葉をそのまんま返された。
「じゃ、なんでいつもみたいに話してくれないの?」
いつもみたいに馬鹿って言って、いつもみたいにおちょくって、いつもみたいにあたしの前で笑ってよ。
「ちょっと忙しかったから」
「忙しかった?」
「そう。だから萌のお見舞いにもいけなかった。ごめんな萌。ずっと心配してた」
頭を撫でる晴馬君の手が何度も擦る。
そのたびに涙腺が緩んで、また涙が出そうになる。
その涙を必死に止めて首を何度も振った。
だって風邪なんかじゃないもん。
ただ行けなかっただけだもん。



