「おはよう萌。元気になった?」
バッタリ廊下で出くわした芹奈ちゃんが覗き込むようにしてニコッと微笑んでくれた。
「うん、すっかり元気だよ」
しょんぼりなんてしてらんない。
芹奈ちゃんを困らせたり迷惑なんてかけれない。
「良かった。凄く心配したんだよ?」
「ごめんね、芹奈ちゃん…」
「麻友も心配して、ずっと萌の話だったんだから」
「そ、そうなんだ…」
麻友ちゃん、ごめんね。
後で謝らなくちゃいけない。
あっ、晴馬君…
芹奈ちゃんの後ろから晴馬君が見えた。
だけど晴馬君はあたし達に気付いてるはずなのに通り過ぎてく。
まるで何もなかったかの様に…
空気みたいに晴馬くんは通り過ぎてった。
どうしていつもみたいに声を掛けてくれないんだろう…
あたしが、あたしが関わらないでって言ったからなのかもしれない。
「…萌?…萌ってば、」
グランと揺れる肩。
目の前の芹奈ちゃんは眉を顰めた。
「あ、ごめん。今日のお昼何食べようか悩んでた」
「えー、来たとこだよ」
そっか。
芹奈ちゃんは別に晴馬君の事をいちいち気にしないんだ。
なのになんであたしは気にするんだろう。
「うん、でも久しぶりのみんなとお昼だから」
「いつもパンだから今日は食堂で食べる?」
「うん」
「じゃ麻友にも言っててね」
「うん」
芹奈ちゃんは教室に入って、晴馬君と話すんだろうか。
なぜかそればかり気になる。
初めてだった。
晴馬君に避けられるのが初めてだった。
いつもおちょくって、馬鹿にして、笑わせてくれるのに。
そんな晴馬君に距離を置かれてる事が何故か辛かった。



