「好きだよ、萌。ずっと好きだった」


顔が離れて佐々木君が囁く。


「ま、待ってよ」

「萌…」

「んっ、」


佐々木君に抵抗する事なんて、出来ないんだろうか。

優しさなんてこれっぽっちもなく乱暴なキスに溺れそうになる。

やだ、こんなの。

佐々木君の事、前から知ってたけど。でも、会って2回目にキスなんてするなんて。

やめて。

あたしの知ってる佐々木君じゃない。


「萌。土曜日12時に俺の学校まで来て?」

「え、学校?な、なんで学校?」

「みんなに萌の事、自慢したい」

「え、ちょっと待って。それに土曜って学校なの」

「それ終わったらでいい。来てくれるよな?萌、俺の事すきだったんだろ?だったら付き合ってるも同然じゃね?」

「え、そんな…考えさせてよ」

「じゃ、土曜日に聞かせて?だから必ず来て。来なかったら萌の事、探し出すから」

「…っ、」


なんだろう。

分かんない。

あれ?佐々木君じゃない。

だれ、この人?


土曜日に佐々木君の学校に行って、何があるの?

自慢って、なに?

付き合ってないよ?


″来なかったら萌の事、探し出すから″


そう言った佐々木君の笑った顔がちょっと怖かった。


″南条なんてロクなやついねーわ″

晴馬君が正しかったんだろうか。


ただ、あたしは昔の憧れに夢を抱いていたんだろうか。

佐々木君との帰り際、「絶対来いよ。待ってるから」そう言った佐々木君の不気味な笑みが頭から離れなかった。