「ねぇ萌、どうしたのよ」
「……」
「ねぇ、萌?」
グイグイ芹奈ちゃんの腕を引っ張るあたしに、芹奈ちゃんの困った声が聞こえる。
状況が分からないあたしに、芹奈ちゃんがため息を吐いた。
「あたし晴馬君の事が分かんない」
「…え?」
振り返ったあたしに、芹奈ちゃんの困惑した声と表情が見える。
未だ掴んでる芹奈ちゃんの腕を更に強く掴むと、「萌?」なんてちょっと沈んだ声が聞こえた。
「晴馬君、佐々木君の事しらないのにロクでもない奴だから会うなって」
「え、誰?佐々木君って?」
「なんで勝手に決めつけちゃうんだろう」
「え、何の話?」
「ロクでもない学校だから会うなって、」
「……」
「だからって佐々木君が悪い人でもないのにさ、勝手に決めつけないでほしい」
「……」
「だから思わず晴馬君に怒鳴っちゃって、今…会いたくないんだ」
「……」
「ごめんね、芹奈ちゃん。教室行くね」
「え、ちょっと萌待って。何言ってんのか分かんないよ」
パッと手を離して歩いて行くあたしの背後から更に困った芹奈ちゃんの声が背後から聞こえて来る。
芹奈ちゃんが困るのも無理ないと思った。
一方的に話したあたしの話に、訳の分からないまま付き合わされたんだから。
だけど思い出したらやっぱり訳わかんなくて、自分でも頭の中が混乱してて、ムカついた。