「ま、いいんじゃないか?
酒の力を借りないと口説けないようなヘタレな
男に引っかからなかったって、事だろ?」

部長は、私の頭を撫でる。

どうしよう!
私の心臓が跳ね上がる。

何で、こんなにドキドキするの?


私は、その後も、ずっと部長にドキドキさせられ続け、カクテルを3杯ほど飲んだ所で店を出た。

「部長もお酒、強いんですね?」

「ああ、これくらいなら、問題ないな。」

会計を済ませた部長は、ドアを開けると、私の腰に手を添えて、外へエスコートしてくれる。

エレベーターに乗ってる間も、左側に触れる部長の体温が心地よくて、そのまま寄りかかりたくなってしまう。

そんな自分の甘えを律して、外へ出ると、部長はタクシーを捕まえて、私を家まで送ってくれた。

ただ、タクシーの中で、ずっと部長の大きな手に握られていた私の手は、降りる時に離れ難くて、困ってしまった。

「おやすみ、爽。」

「おやすみなさい。」

部屋に入り、シャワーを浴びても、ベッドに入っても、部長の事が、頭から離れない。

私は、なかなか寝付けないまま、寝不足で朝を迎えた。