【参加した理由】


暑い。


暑すぎる。


バスの中は、初秋だというのに異様な熱気に包まれていた。


それもそのはず。


車内は【押しくらまんじゅう】を時で行くかのように【でぶ】がひしめき合っている。


窓ガラスが曇るほどのサウナ状態と化しており、今どこを走っているのかさえ分からない。


確か高速に乗って、どんどん山道を走っていたが?


私は酸素を求めるように、少し腰を浮かせた。


「冷房、効いてるの?」


隣の席の前田亜季(まえだあき)は、額から玉のような
汗を流している。


「もうすぐ、着くんじゃないかな?」


「それならいいけどさ」


砕けた口調で言うのは、私と同じ年だからだ。


【究極のダイエット。勝ち残れば1億円‼︎】


そんな嘘くさいメールが届き、フラれた直後の私は参加を決めた。


指名された日時に行くと、すでに大勢の【でぶ】が大挙して押し寄せているではないか。


参加者はバス3台分。


バス横のテントに入り、ジャージに着替えた。言われた番号の席に座ると、隣にやってきたのが、亜季というわけだ。


「よろしく。私は【88kg】なんだけどあなたは?」


「私は__【82kg】」


そう答えた。