【黄金の水】


いや、あり得ない。


だってそうでしょ?


こんなこと、あり得るわけがない。


もうそろそろ、日付が変わろうとしている。


部屋に戻る前に体重を計ったら、0.5kgしか痩せていなかった。


あと少なくとも、1.7kgの減量に成功しなければ、私は失格となる。


ほぼ3日間、なにも食べておらず、もう走る気にもならない。


走ったところで、体重も減らないだろう。


だからこそ、惨めな思いまでして【一晩で3kg痩せる方法】を聞き出したというのに__。


「やっぱり無理ー‼︎」


1人、部屋の中で絶叫した。


きっと篤志は、私をからかっている。


嘘を教えたんだ。


そもそも、一晩で3kgなんて。私も1日目には2kgで2日目にはそれ以上痩せたが、それは飲まず食わずで走ったからだ。ちゃんとした、全うな理由がある。


でもこれは__そう、踏み外している。


篤志が教えてくれた方法は、簡単だが、不健全だった。


こんなことで痩せるのか?


あまりに簡単すぎるが「これは奥の手だ。あんまりやると体調を崩すからな」とも、教えてくれた。


それならやっぱり痩せるのか?


私はじっと、机の上の液体を見つめる。


それは【黄金】に輝いていた。