沢渡篤志だ。


私を見て、ほくそ笑んでいる。


噂では篤志は、1日目から2日目に微量に体重を増やしてクリアしたらしい。


まるで自由自在に体重を操れるようだと、小塚さんが言っていた。


「まあ俺からしたら、よく2日目も合格できたな」


「放っておいてよ」と返す元気も、私には残ってはいない。


それが面白くないのか、フンっと鼻を鳴らして行ってしまった。


その背中を見送りながら、もうできることはないと諦める。


今さら走ったところで、3日目をクリアするのは無理だ。


由加里には悪いけれど、あと半日あまりで2kgを痩せる方法なんて、あるわけが__?


「ちょ、ちょっと待ってよ‼︎」


私は呼び止めていた。


沢渡篤志が振り返る。


「一晩で3kg痩せられる方法があるって?」


「あったらなんだ?」


「教えて‼︎」


「どうすれば教えてやるか、前に説明したはずだがな?」


「それは__」


言葉に詰まる。


確か、努力もせずに太ったと認めろと言っていた。


恐らく、筋肉質な篤志からしたら、私たちデブの存在が許し難いのだろう。だから当たりが強いのだ。


でも__悔しい。