【2kgの壁】


もうダメだ。


ベッドに潜り込み、布団をすっぽり被っていた。


だって、2日目も2kg痩せないといけない。


いや、2kgじゃダメだ。


それより1gでも多く、しかも3日目はさらにそれ以上1gでも多く痩せないといけない。


3日間で6kgなんて無理だ。


1日目に2kg減ったのは、いうなればビギナーズラック。


ここしばらくダイエットとは遠ざかっていたため、減り方が激しかっただけ。それをあと2日連続で痩せ続けるなんて、不可能に違いない。


もう、ダメだ。


「真帆、居るんでしょ?」


さっきからずっと、ドアの向こうで由加里の声がしていた。


自分のダイエットがあるのに、こうして私を呼び続けている。


本当は放っておいてほしいが、小塚さんの声も聞こえてきた。


仕方なくドアを開ける。


「無理かもしれないけどやるだけやってみようよ?」


「正直、僕も1kg以上は厳しいんだけどね」


小塚さんが力なく笑う。


笑うとまた目がなくなって、優しくなるんだ。


少し、肩の力が抜けた気がした。


ダメなら、帰るだけだ。


もともと【1億円】を狙っていたわけじゃない。


少なくても2kgのダイエットができたんだから良しとしよう。