【噛みちぎられた腕】


「真帆ちゃんも、僕のこと愛してる?」


あまりの気持ち悪さに、声も出なかった。


私はきっと、美味しい肉なんだ。


人でもなんでもない、ただの肉の塊。


「好きな人を食べると、その人をいつまでも感じることができるんだ」


「それは、てめぇがただ腹が減ってただけだろうが」


「違う‼︎そうじゃない。きっと真帆ちゃんなら分かってくれるはず。だって、君の友達も自分を解き放ったじゃないか。真帆ちゃんも、突き上げる思いに身を任せればいい」


「こんなやつに洗脳されるな」


「うるさい‼︎これは、僕と真帆ちゃんの崇高な絆なんだ。お前なんかに、お前なんかに__」


「どうでもいいが、ちゃんとヨダレ拭いてから話せよ。説得力の欠けらもない」


篤志に指摘されると、慌てて口周りを拭う。


それでも溢れ出てくる汚いヨダレは、欲望の証。


私を喰らいたいという、本能。


「そんな目で見ないで。今から僕の愛を証明するよ」


そう言うと、部屋の隅っこに行ってしまった。


「おい、ハサミ貸せ‼︎」と半ば奪い取るように、篤志が飛びついてくる。


「くそっ‼︎」


ハサミで、私の手首の拘束を外そうと試みるもムダだった。


「いっそ、指でも切るか?どっか1kg分」


冗談めかして言った篤志に向かって、私は叫ぶ。


「お願い、切って‼︎」


と。