全身の肌が、粟立つ。


あまりの恐ろしさに、心が凍てつくようだった。


「僕はね、真帆ちゃん。彼女と参加したんだ。元々、僕の彼女は太っていて、それをずっと気にしていた。僕からしたら、そんなコンプレックスでさえ愛おしかったのに」


彼女のことを語り出した小塚さんは、時折、遠い目をして、当時を思い出しているよう。


水は、とうとう腰骨まで到達しており、その勢いは止まらない。


「2人で頑張って協力し合って、ちょうどこれくらいの人数かな、そこまで勝ち上がることができた。でも、もう彼女は限界で__僕も半月は、なにも飲まず食わずだったんだ」


壮絶なダイエットは、容易に想像できる。


飢えは、人の心も蝕んでいくから__。


私は、未だにアキを、アキの全てを喰らいつくそうとしている由加里を振り返った。


「気づけば、彼女は死んでたよ。だから僕は、食べたんだ。世界で1番、愛している人を」


小塚さんの目から、涙が一筋、こぼれる。


「涙を流して食べたよ。その味は、今も忘れられない。忘れることなんかできない、唯一無二の味。それからなにを食べても、味気なくてね。僕はまた、あの最上級の【肉】を味わいたくて、参加したってわけ」


涙を拭って、微笑んだ。


それはいつもと同じ、優しい微笑みだった。


そして小塚さんは、私に言った__。