フ「…ふぅ……」


フルムーンはあんな数、しかもほとんど族ひとつ相手のようなものなのに……

俺はいつの間にか手が震えていることに気がついた。そして、グッと唇を噛んだ。

勝てない。

そう本能が語っていたから。



?「…名前…」



フ「私の名は…フルムーン」



?「フルムーン…」




フ「ねぇ、あなたは…どうしてここにいるの?」


俺がここに隠れていることに気づいているであろうフルムーンは、なにも言わずそのまま男と話し始めた。


?「俺は…黒炎の人間だから……っ」


黒炎って確か、結構名の通った族だ。…総長の……確か不破…だったか?……が、子供だろうと容赦しないっていう非道の…。


フ「そうじゃない。あなたはここにいるべき人間じゃない。……非道な心をもっていない」


フルムーンがそういうと男は黙った。



フ「……仲間がいれば人は変わる」



仲間……?…そんなもんで、人が変わるわけないだろ……



フ「自分が心を許せる人。自分が守りたいと思った人。こいつらといれば自分は最強だって思える人。……友達じゃない、仲間を。……持ったらきっと君は強くなれる」



自分に言われてるのかと思った。この人の言葉はなんだかすごく心に染みる……。多分それは、俺が手を汚してきたからだ。

仲間なんていない、つくりたくない。そんな俺にそれじゃ強くなれないって言われてるようだった。



フ「もう、ここに警察がくるはず。君も逃げなよ。……ここは君のいるべきところじゃないから」


そうだ!警察くるんだった……!



真田「ッチ……俺も逃げねぇと……」



その後のことは知らない。でも、俺は依頼のフルムーンを倒せなかったし、倒そうともしなかった。