自殺日和の天気ってものはあるもんで、その日もやっぱり俺は死に場所を探して歩いたが、面倒になってやめた。
 自販機で適当に煙草を買って、すぐ近くの公園のベンチに座わる。
 三年間愛用しているトートバックから二日前に発売された漫画本を取り出して読む。
 口が寂しくなって煙草を咥えた。火をつけて燻らす。そのとき初めて、買った煙草の銘柄が二日前に別れたばかりの彼女が吸っていたものだと気づく。
 彼女は、煙草の似合わない女だった。
 「high-soft」のメンソールは身体に程よい刺激をくれる。
 空を見上げると月並みに、青い空、白い雲。
 彼女は空を見上げる習慣のない女性だった。
 それが俺は少し悲しかった。