私の胸の前に、課長の腕がある。

「こんなに一生懸命な奴だと、思ってなかった。見直したよ。」

「え、ええ……そんな。」

ぎゅっと強くなっていく腕の力に、上手く息ができない。

こんなのって、私だけ?


しばらくして、課長は私から腕を放すと、自分の上着を私の肩に掛けてくれた。

「寒いだろ?」

「あ、ありがとうございます。」

も、もう!

課長ったら、優しすぎ!

ドキドキが止まらない。

「コーヒー買って来てやるよ。それまでに、仕事終わらせろよ。」

そう言って課長は、オフィスを出て、自販機がある方へと、歩いて行った。


課長の甘い匂いが、私の周りを包む。

課長。

ただのお気に入りなのに、ここまでやるんですか?