関係者室で遥とジュリの試合を見ていたサトミ王女とメルセデスは遥の1000人斬りに開いた口が塞がらない。

確かに死人には魂が無いから勝負の熱・・・いわゆる勝つという気迫が無いから遥の方が有利かも知れないと見ていたが、もっと時間がかかると思っていた。まさか、いとも簡単に瞬殺されるとは思わなかった。

「メルセデス、やはりあの方は今大会の優勝候補筆頭の様ですね・・・。このまま遥さんが優勝するのでしょうか?」

「サトミ様、反対のブロックからは遥と同じ島国出身のくノ一が圧倒的な強さで勝ち進んでます。遥が準決勝で奴に勝てたならば二人の決勝になります。」

ここでサトミ王女はメルセデスの「奴」という言葉に反応する。

「奴とは一体誰・・・?」

「奴とはサトミ様もよく知っている人です。先代国王の用心棒をしていた丈児です。」

サトミ王女はその名前を聞くと目を輝かせる。それはまるで好きな人に興奮するかのような輝きだ。

「丈児さんが今大会に出ているのですか?なぜもっと早く言わないのですか!」

王女は嬉しそうな顔で怒っている。

「実は我が国では丈児が用心棒を辞めたせいで国王がユニバ帝国との戦いで死んだと思われているのです。そして、その戦いでは我が国の大将軍であったマイコラス様もユニバ六大将軍のサファテに討ち取られています。そして私も軍師としての能力も高い丈児が用心棒を辞めなければあの戦は無かったとも思います。」

しかし、国民に不信感があろうとも丈児は間違いなく優秀な男である。今の衰退したサミイ国には絶対に必要な人材では無いだろうか。

だが、内気なサトミ王女には言い返す言葉がなかった。それに丈児が3位に入れば問答無用に用心棒として雇えるのだ。

このルールは絶対なのだから王女は黙ることを選択した。