その試合を観ていたサトミ王女は遥の活躍に珍しく興奮していた。

「メルセデス、見ましたか?あの女剣士の技!とても格好良かったです!ああいう方を用心棒としたいですね!」

「ええ、そうですね。アレだけの力量はなかなかお目にかかれません。もし準決勝まで残れば採用したいものですね。」

しかし、メルセデスはおっさんの負けかたがあっさりしたのが不満であった。メルセデスとしては最後まで力の限り足掻いてもらいたかった。そうしないと見えてこない物もあるからである。

しかし、遥の『月影』とおっさんの『八艘飛び』はいずれも普通の身体能力では使えない技である。そして、会得するのにもかなり時間がかかるであろう。

メルセデスは薄々感じとった。この大会に出ている人の中には自分を越える強者がおり、その中にはサミイ国の未来を担えるほどの器の持ち主もいると。

それと同時に少し残念なお知らせも入ってきた。前の試合を見て、サトミ王女の用心棒になってくれたら良いと思っていた元傭兵の女騎士が巨体のデブに負けたというのだ。

メルセデスは流石に巨体のデブを姫の用心棒には相応しくないと感じた。しかし、実力が全てと言われている以上、準決勝まで残った内の3人は辞退が出ない限り用心棒として雇わなければならない。

やれやれ、こんな事なら試験を受ける為の条件を付けておけば良かったと思う。