1回戦が終わり、遥は控え室に戻っていくとき観客達が物凄く動揺していた。さっきの相手のクルーンはサミイ国の特級魔法で氷魔法なら世界でも有数の使い手と言われていたのであるが、それを軽々と倒した。しかも、クルーンの最強魔法であるブリザードドラゴンのブリザードキャノンの軽く飛んで回避する身体能力、そして硬い氷で覆われているブリザードドラゴンの首を一振りで斬り落とすその剣術に格闘技マニア、各国のお偉いさん達、そしてサミイ国の上層部も驚きが隠せず、会場では未だにその驚きでざわついている。


遥は控え室には入らずにその周辺にある自動販売機でアップルジュースを買ってベンチに座る。

「はぁ〜、中々楽しかったな、アレが魔法か・・・。でもやはり魔法は呪文を唱えなければならないからかなり隙があるな。アレなら私の国の忍者が使う忍術の方が厄介だな。まあ、忍者は氷系の忍術を使わないから、氷系としては魔法使いは需要あるんだろうな。」

ブツブツと遥は先の戦いの感想を独り言で言いながらジュースを飲む。

「やぁ、遥ちゃん!初戦突破できたようだね!」

その声はっ・・・と振り返るとウイチが声をかけてきた。

「おお、ウイチお前も突破できたのか?」

「勿論!僕の射撃はかなり強いよ?遥ちゃんとも戦いたいね。」

こんな軽口を言っているウイチであるが、ウイチは先の遥の活躍を耳にしている。本心では絶対戦いたくねぇと思っている。

「おお、鉄砲使いとも戦いたいな!鉄砲の弾丸なら避ける事出来るし良い戦い出来そうだな。」

普通、鉄砲の弾丸なんて避けること出来ねーから!と心の中で叫ぶウイチ。

その時ふと遥は気になる部屋が目にはいった。控え室とは違う部屋で沢山の人が入っていくのを見る。

「ウイチ、あそこの部屋ってなんだろうな?ちょっと行ってみないか?」

「あ、ああ行ってみようか。」

遥達はその部屋のドアを開けてみた。すると、その部屋からは負けた者達の、敗者達の吹き溜まりであった。

「うっ・・・。」

二人はすぐさまに部屋を出た。あの敗者達の負のオーラに耐えられない。王女の用心棒になると給料もかなり貰えるし、色んな待遇も優遇されるしで、今日この日の為に全てを賭けてきた者もいるだろう。つまり、今日の負けで生活がいつもの質素な物になるという人もいるのだ。

また、遥の対戦相手のクルーンみたいにおしっこ漏らして気絶という情けない負けかたをして表を歩けない人もいるであろう。そういう人は名誉を傷つけられ精神的に不安定に陥る。

この試験の敗者には色々な末路が訪れるという事である。