私は勝負が始まる前のこの緊張感、空気・・・とても懐かしく感じた。

「それでは両者、正々堂々と勝負・・・始めっ!」

審判がゴングを鳴らして勝負が始まった。本来なら勝負開始と同時に瞬殺したかったのだ、遥は魔法使いがどの様な攻撃をしてくるのか見てみたかった。

すると、クルーンは何やら呪文のような物を唱えており、唱え終えると氷の弾丸の様なものが飛んできた。

「なんだこれは?」

氷の弾丸、遥はそれに全く驚きもせずに刀で一閃、斬り落としていく。

クルーンも観客もこれには驚いた。氷の弾丸とは言うなれば鉄砲の弾丸を氷にしたようなものど、飛んでくる速さは鉄砲の弾丸と同じ、もしくはそれ以上の速さなのだ。それを軽々と斬り落とした遥に観客は絶句した。

「嘘だろ・・・他国の魔法使いからも氷の弾丸の威力を認められているのに。ならばっ・・・!」

再び呪文を唱える。すると今度は氷の竜のようなものが空から現れた。この召喚に観客も沸き立ち、遥も「なんだこれはっ」と驚く。

「この俺の作り出したブリザードドラゴン、君に倒せるかな?喰らえ、ブリザードキャノン!」

クルーンがそう叫ぶと竜は口から物凄い氷と雪が混じった波動砲を出した。流石に観客もクルーンも勝負が決まっただろうと思っていた。

「魔法とはわざわざ呪文を唱えないといけないから面倒だな。」

クルーンも周りの観客も驚くしかなかった。竜のブリザードキャノンが当たる寸前で遥はジャンプをして攻撃を避けていた。

「なぁっ・・・!?飛んだぁっ・・・!?」

そして、その勢いのまま竜の首を斬り落とした。首を斬り落とすと竜の体は砕け散っていった。

「もう良いかな。お前もさっきのが全力だった様に見えたし。」

遥はクルーンの喉元に刃を近付ける。そして刀の刃が喉に当たる。それはとても冷たくて・・・とても怖い感触である。

「ヒ、ヒィっ〜〜!!すんませんした!ごめんなさい、ガキだからと言って舐めてすんませんしたァァァ!!!殺さないでくださいいっ〜〜〜!!」

クルーンは叫びながら気絶した。そしておしっこを漏らしていた。

「ん?殺しは禁止なんだからするわけ無いだろ?なんだったんだ・・・?」

大袈裟に叫んで気絶したクルーンを見て審判が「勝負アリぃ〜!!」と言い1回戦が終わった。